イヴのおくりもの。

7/11

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
   トマスは反省していた。トマスが今までずっと思っていた事、それは誤りだったからだ。街の皆が自分を応援している、なんて口先だけで言っているのかと思っていたからだ。  けど、そうじゃなかったのだ。皆、本当にトマス達家族の事を心配し、協力してくれようとしていたのだ。ただ、トマスが卑屈になってしまっていただけだったのだ。 「ほら…トマス。これはあなたのお金。あなたが一生懸命頑張ってくれたから集まった、大切な宝物なのよ」  宝物………。  トマスがお姉さんから受け取ったその袋はずしりと重く、街の皆がどれほどトマス達を気にかけてくれていたのかが一目で分かるものだった。  街の皆の思い………その重さを実感し、トマスはまた、泣いた。 「こら、トマス。男の子のくせに泣いてばっかいるんじゃないの。ほら、あなたが一生懸命集めた手術代…お母さんに渡しなさい」  うん、と小さく頷くと、トマスはその袋をお母さんに手渡した。ずしりと重いその袋を大切に抱き締めながら、お母さんは涙を流した。 「トマス………ルーシア………ありがとう。お母さんの為に二人ともこんなに頑張ってくれて………本当に………ありがとう」  涙を流しながら抱き合う三人。その姿にイヴもまた涙を流した。これでようやく、トマスも笑顔になれるだろう。そう思いながら、イヴは小さく微笑んだ。  丁度その時、十二時を告げる鐘の音が街の方から聞こえた。今日はクリスマス。奇跡の起こる日である。 「………ありがとうな、イヴ。お前達が来てくれたおかげで、こんなに幸せなクリスマスを迎えられた」 「え?うん…けど、イヴは何もしていないよ。トマスが今までずっと頑張ってきたから、奇跡が起きたんだよ」 「けど、イヴが来なかったら俺は家で一人、退屈なクリスマスを迎えてたんだろうと思う。こうして母さんや姉さんとクリスマスを迎えられたのは、イヴのおかげだよ」 「………うん。ありがとう、トマス」  ニコリ、とイヴが微笑む。それにつられ、トマスも微笑みを浮かべた。 「良かったな、イヴ。トマスを笑顔に出来て…まぁせっかくのクリスマスだってのに、飾りも何もない色気のない病室ってのはどうかと思うけどにゃ」  にゃはは、とナイトが笑う。  確かにナイトの言うとおり、せっかくのクリスマスなのに何もないのは少し寂しい気もするけど………。  
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加