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「それでしたらご心配なく」
何処からともなく聞こえた声。そしてチリリンと鳴るベルの音。何事かと辺りを見渡すと、病室の中空でベルを鳴らしながらクルクルと廻るファニーベルの姿があった。
「ファニーベル!!一体こんなところで何をしているの?お祖父ちゃんのお手伝いは?」
「ご心配なく、サンタクロース様のお仕事ならば既にバッチリ!終わらせてまいりました。わたくし共イヴ様の為に何か出来ることはないかと全員一丸となって今日この日の為に切磋琢磨した次第でございます」
「みんなって…」
「メリークリスマス!!」と、突如室内に響く楽しげな声。そこにはファニーベルをはじめとするサンタクロースの仲間たちが一斉に勢揃いしていた。
「レディース&ジェントルマン!!今宵はついにクリスマス!!笑顔と喜びに満ちた奇跡の一日の始まりでございます!!さあさ皆さま方、年に一度のビッグイベント、この機を逃すと一年後、盛大に盛り上がって参りましょう!!」
ファニーベルの掛け声と同時に病室の中に華やかな光が満ちる。人形たちがクルクルと躍り、空飛ぶキャンドルが色鮮やかな光を放ち室内を飛び回る。
「みんな…ありがとう。イヴ、とっても嬉しい!!」
「お喜びになるのはまだ早いですよ、イヴ様。さぁ、パーティーの始まりです!!」
どこからともなく現れたチキンやケーキ、山盛りのお菓子にシャンパン。窓の外では真冬の花火が上がり、雪のない街並みに粉雪が舞い散る。
その光景に見とれていると、ファニーベルたちがその美声を披露し始める。
“メリークリスマス 心から
メリークリスマス 届けよう
メリークリスマス 私から
メリークリスマス あなたへと
さぁ みんなで手を繋ごう
声を合わせ 一緒に歌おう
一年に一度の 奇跡の夜
宝物はほら みんなの笑顔
メリークリスマス 心から
メリークリスマス 届けよう
メリークリスマス 大切な
メリークリスマス あなたへと”
イヴやナイト、トマスとその家族、そしてファニーベルたちの歌声が響き渡る。それはトマスが、そしてイヴ自身が初めて経験する、最高のクリスマスであった。
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