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「あれ?モンタナ、今誰かと話してなかった?」
ガラガラ、と窓を開け、イヴが顔を覗かせる。
「ん?いや………独り言だよ、独り言」
「ふぅーん…あれ?モンタナ、なんか鼻、光ってない?」
「あぁ、何だか突然光り始めたんだよ。今日はクリスマスだからな、奇跡でも起きたんだろ」
「わぁ、凄いね、モンタナ!こんなにキラキラ光る鼻があれば、サンタクロースのお仕事もきっとスムーズになるよ。良かったね、モンタナ」
ニコリ、とイヴが微笑む。それにつられ、モンタナも微笑んだ。
「そうだ、モンタナ。モンタナも一緒においでよ。今からファニーベルがものまねショーするみたいだよ?」
「え?マジで?」
それは是非見ておかないと…モンタナはイヴの手に引かれ、皆の待つ部屋へと入っていくのであった。
☆ミ
………そして、別れの時がやって来た。
白々と夜が明け始め、鳥の囀りが朝を告げる。トマスたちは一晩中騒ぎ疲れ果て、すやすやと寝息を立てていた。
イヴは物音を立てぬようモンタナを起こし、ぐっすりと眠るナイトを抱き抱えると、窓を開け赤いソリに乗り込んだ。
イヴの目的、それはようやく達成された。つまらなそうな顔で魔法の鏡に映っていた少年、その少年の幸せそうな顔を、見ることが出来たからだ。
「………挨拶、しなくていいのか?」
コクリ、とイヴが小さく頷く。
そうか、と小さく呟き、モンタナとソリがゆっくりと空に浮かぶ。
「待って!!」
その時、イヴたちを引き止める声が聞こえた。それはトマスだった。
トマスは病室の窓から身を乗り出し、イヴたちを見上げていた。
「イヴ、もう行っちゃうのか?」
「うん…イヴ、もう帰らなきゃ。お祖父ちゃんたちもきっと心配してる。そろそろプレゼントを運び終わって帰ってくる頃だろうし」
「そっか…なぁ、来年のクリスマスも、お前来るのか?」
「ううん…イヴ、まだお祖父ちゃんのお仕事手伝えないから…来年は、きっと来れない」
そっか…と、トマスは落胆する。イヴもなんだかもうトマスに会えないのかと思うと、胸がチクチクした。
「お前、いつかサンタクロースになるんだろ?そしたらまた来てくれるのか?」
「どうだろ…イヴは確かにいつかサンタクロースになりたいよ?けど、イヴはお祖父ちゃんと違って魔法も使えないし…」
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