笑顔をなくした子供。

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   イヴは膝の上に置いた手をぎゅっ、と握る。お祖父さんはとても立派な人だ。世界中の子供たちに幸せを与えてくれる。けど、それがいつまで続けられるのかとなると、イヴは不安になってしまう。  お祖父さんはずっとサンタクロースだった訳ではない。お祖父さんがサンタになる前、他の誰かがサンタクロースだったのだ。  イヴが生まれるずっと前、お祖父さんはそのサンタクロースからサンタクロースの仕事を譲り受けたのだ。だからいつか、お祖父さんも他の誰かにサンタクロースの仕事を譲る時がやって来るのだろう。そう考えるとイヴは胸が締め付けられるのだった。 「大丈夫だよ、お祖父ちゃんだってイヴ達が来てくれて嬉しいって言ってたでしょ?」 「そりゃそうさ、可愛い可愛い孫娘がわざわざ逢いに来てくれたんだ、嬉しくない筈がない。けどさ、それで仕事が捗る訳でもないだろ?イヴも僕もサンタクロースの仕事を手伝える訳じゃないんだし」  少し意地悪なナイトの言葉にイヴは頬を膨らませる。しかし、ナイトが言うことも尤もだ。  イヴはお祖父さんの仕事を手伝える訳ではない。ナイトだって同様だ。だとしたら、イヴはもしかすると邪魔をしにきただけになってしまう。  イヴはお祖父ちゃんが大好きだ。だけれど、お仕事の邪魔をしたくはない。もしサンタクロースの仕事が失敗してしまったら、お祖父さんは次の人にサンタクロースの仕事を譲らなければいけなくなるかもしれないからだ。 「ねぇ、ナイト。お祖父ちゃんもいつか………サンタクロースじゃなくなっちゃうのかな?」 「ん?そうだなぁ…サンタの爺さんも結構年寄りだからなぁ。もうそろそろ体力的にも限界だろうし、いつ引退するのやら………」 「誰が引退するって?」  ぎょっ、とナイトが身を竦める。のそりと隣の部屋から顔を覗かせるお祖父さん。手には湯気のたったマグカップを二つとミルクの入った皿を持っていた。 「まったく、油断も隙もあったもんじゃないなお前さんは。人がいないと思ってイヴに変なことを言うんじゃない」  スッ、とお祖父さんがマグカップをイヴに手渡し、ナイトの前にミルクの入ったその皿を置いた。 「………ねぇ、お祖父ちゃん。本当に大丈夫なの?イヴがいて邪魔じゃない?」  イヴの言葉にお祖父さんはにっこりと微笑んだ。  
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