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「あぁ、大丈夫じゃよ。クリスマスの準備はもう万端だからの、イヴはなんにも心配しなくていいんじゃよ」
良かった、とイヴは胸を撫で下ろす。ナイトはばつの悪そうな顔でチロチロと舌を出し皿のミルクを舐めていた。
「そうだ、お祖父ちゃん。イヴね、お祖父ちゃんにお願いがあるの」
「ん………なんじゃい?」
と、お祖父さんはイヴの焼いたクッキーを食べながら答えた。
「あのね、イヴ、魔法の鏡が見たいの」
ほぅ、とお祖父さんは白い髭を撫でながら小さく息を吐いた。
魔法の鏡。それはサンタクロース、つまりお祖父さんの部屋にある鏡である。その鏡は不思議な鏡で、世界中の子供たちの姿が映し出される鏡であった。
本来その鏡は子供たちがサンタクロースに何をお願いしているのかを調べる為の道具である。イヴがその鏡を初めて見たのは、昨年のこの時期であった。
お母さんに頼まれてお昼御飯のパンを届けにお祖父さんの部屋に行ったときの事だった。イヴはとても驚いた。何の変哲もない鏡。しかし、その鏡を覗き込んだ瞬間、沢山の子供たちがサンタクロースにお願いしている姿が映し出されたのだ。
イヴはそれがとても面白く、その日ずっと鏡の前から離れようとしなかった。鏡の虜になってしまったのである。
しかし、鏡が子供たちの姿を映し出すのは一年のうち僅かな時間だけ、クリスマスシーズンだけなのである。それ以外の時間、鏡はただの普通の鏡に戻ってしまうのだ。だからこそ、イヴは我が儘を通してまで、お祖父さんのところに遊びに来たのだ。再びあの魔法を見たいがために。
「魔法の鏡か。ふむ、イヴはあの鏡がお気に入りなんじゃな…まぁいいじゃろう。ただし、ただでとは言わんぞ?」
え?とイヴは首を傾げる。
「これからクリスマスまでの間、毎日儂のところにお昼御飯を届けること。それが条件じゃ」
うん!とイヴは笑顔でそれを快諾した。
お祖父さんはそんなイヴの様子を見て、笑顔でクッキーを頬張っている。
ナイトはまったく、サンタの爺さんも甘いんだから…と、小さく呟き、ふかふかのソファーの上に丸くなるのだった。
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