笑顔をなくした子供。

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          ☆ミ  お祖父さんの部屋は沢山の魔法で溢れかえっていた。  喋るランプに空飛ぶ絨毯、勝手に動くペンに宙を舞う紙、棚の上に並べられた人形たちと一緒に唄う鹿の剥製、お祖父さんの部屋はイヴにとって夢と希望の詰まった宝箱のようであった。  賑やかに唄い、そして働くサンタの仲間たち。その様子を眺めていると、時が経つのも忘れてしまいそうになる。 「よいしょ…っと。さて、ファニーベル。仕事は進んでおるか?」  椅子に座り一息つくお祖父さんの元にピョンピョンと跳ねチリンチリンとベルを鳴らしながら、ファニーベルが近づいていく。 「イエス、サンタクロース!仕事はつつがなく進行しております。子供たちに配るプレゼントもバッチリ!明後日にはご用意出来るかと」  ふわふわと宙に舞う大きな白い袋。プレゼント達はまるで糸で操られた人形のようにひょいひょいとその中に飛び込んでいく。 「書類の方も問題ございません。クリスマスに向けての準備はバッチリ!でございます」  ふわふわと空を飛ぶ紙。お祖父さんはそれを掴まえるとふむふむと小さく唸りながら書類に目を通す。 「我がサンタクロース聖歌隊の方もバッチリ!でございます。聞いてくださいませこのハチドリのような澄み切った麗しい声。あぁ、もうとろけてしまいそう…」  高らかに声を揃えジングルベルを唄う鹿の剥製と人形たち。その陽気で素晴らしい歌声に、イヴは思わず笑みを浮かべた。 「ふむ、なるほどの。準備に抜かりはないようじゃ。さて、話は変わるがの、ファニーベル。イヴが魔法の鏡を見たいと言っておるのじゃが」  魔法の鏡!!と、ファニーベルがやけに大きなリアクションで大きく跳ね上がった。 「そうでございますか、イヴ様が魔法の鏡を………」 「お願い出来る?ファニーベル」  イヴが上目使いにファニーベルを見つめると、チリンチリンとベルを鳴らし、ファニーベルがくるくると回転した。 「当たり前じゃございませんか、イヴ様はサンタクロース様の孫娘、わたくしにとっては主人に代わりございません!イヴ様が望むのならばこのファニーベル、魔法の鏡だろうが魔法のお城だろうが、すぐにご用意させていただきます!」  チリンチリンとベルを鳴らし魔法の鏡を呼び寄せるファニーベル。その頼もしい姿を見て、魔法のお城も見てみたい気がするな、とか思うイヴであった。  
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