笑顔をなくした子供。

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   ファニーベルのベルの音につられサンタの仲間たちが一斉に歌い踊り始めた。 “ジングルベル ジングルベル  鈴がなる  今日は楽しいクリスマス♪”  サンタクロースの白い袋から次々と顔を出すプレゼントたち。  棚の上で高らかに歌い手に手を取りくるくると踊る人形たち。  ふわふわと鳥のように空を舞う紙にペンが描くクリスマスツリーと“メリークリスマス”の文字。  宙を舞うランプはチカチカと光り、イヴを乗せた絨毯はうねうねと波打ちながら跳ね上がる。 “ジングルベル ジングルベル  鈴がなる  今日は楽しいクリスマス♪” 「レディース&ジェントルマン!本日お集まりいただいた皆々様方に感謝の言葉を!さて、ただいまより素敵なゲストをお呼びいたします!子供たちの願いを映し出す魔法を操る素敵な鏡、そう、魔法の鏡の入場です!!」  バタン、と扉が開き、スポットライトを浴びながら、魔法の鏡が部屋に入ってきた。ピョコピョコとユキウサギのように跳ねながら魔法の鏡はイヴに一礼すると、部屋の中央にドスン、と立ち止まるのであった。 「お待たせいたしました、イヴ様。イヴ様のご所望しておりました魔法の鏡でございます」 「ありがとう、ファニーベル」  イヴがファニーベルに礼を言うと、ファニーベルは少し照れたようにクニャクニャと動き、再び仕事を再開するのであった。 「さて………イヴ、魔法の鏡で何を見るつもりなんだい?」 「何って事はないの。イヴね、鏡の中の幸せそうな子供たちの顔を見てるのが好きなの。なんだか心が温かくなるから」  そうかそうか、とお祖父さんは嬉しそうにイヴの頭を撫でた。その大きな手はとても温かく、イヴはなんだか嬉しくなった。  次々に現れる子供たちの姿にイヴは思わず笑みを浮かべた。お祖父さんはやっぱり凄い人だ。こんなに沢山の子供たちを笑顔にする事が出来るのだから。  そしてイヴにはそれが少し不安でもあった。お祖父さんは素晴らしいサンタクロースだ。だけど、いつかサンタクロースになりたいと願うイヴにとって、それは大きな壁でもあるのだ。  お祖父さんを越えるような立派なサンタクロースになるために。  
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