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「どうしたんだよ、イヴ。なんだか浮かない顔して。せっかく見たかった魔法の鏡をこうして見ているんだ、もっと喜んだらどうだ?」
いつの間に部屋に入ってきたのか、気が付けばナイトがイヴの背後に立っていた。
「うん…ねぇお祖父ちゃん。イヴもいつかお祖父ちゃんみたいな立派なサンタクロースになれるかな?」
「おや、イヴは将来サンタクロースになりたいのかい?」
うん、とイヴが小さく頷く。その姿を見て、ファニーベルがチリリンとベルを鳴らした。
「なんと!イヴ様は将来サンタクロースになりたいと…それはそれは、なんと素晴らしい目標でしょうか!わたくし共もイヴ様がサンタクロースになるのを楽しみにしております」
「うん…けどね、ファニーベル。イヴは少し不安なの。お祖父ちゃんは立派なサンタクロースだよ。世界中の子供たちを幸せに出来る立派なサンタクロースだよ。けど、イヴはお祖父ちゃんみたいな立派なサンタクロースになれるか心配なの。だってイヴはまだ…」
イヴが口ごもったのと同時にその表情が陰る。その場にいた皆がイヴが何を言おうとしているのか理解したようで、どことなく神妙な面持ちでその様子を見守っていた。
そう、お祖父さんは魔法が使えるのだ。お祖父さんだけではない、お母さんやファニーベル、黒猫のナイトもお祖父さんほどではないが魔法が使えるのだ。
だけどイヴには魔法が使えなかった。お祖父さんのように魔法で皆を操ったり、子供たちに幸せを与えられるような魔法を使えないのだ。その事がイヴは気掛かりだった。
「ねぇ、お祖父さん。どうしてイヴには魔法が使えないの?」
「む?うーむ…それはじゃな………」
途端に口ごもるお祖父さん。お祖父さんに聞いても仕方がない事をイヴは知っていた。けど、いつか誰かが答えを教えてくれる事を期待しているのも確かだ。
ここに住む皆が使える魔法。イヴもいつか大きくなれば魔法が使えるようになるのではないだろうか。
すがるような思いで、そんな淡い期待をイヴはずっと抱いていた。
「イヴ様はまだお若い。魔法というものは長い時間と練習があってこそ使えるものなのです。ですからいつかイヴ様も大きくなったらきっとバッチリ!立派に魔法を使いこなせるようになりますよ、はい」
ファニーベルはそう言ってイヴを励ます。その優しさに、イヴは小さく頷いた。
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