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ユズの後姿をボーっと眺めながら、僕も自分のクラスの受付へ歩いていった。
「あ、そこの君、ちょっと待って!」
僕は1組の表示を見つけ、列の後ろに並ぼうとした瞬間、後ろで声がした。
僕はその声が自分に向けられているとは気づかなかったので、そのまま列の最後尾を目指して歩いていたらふいに肩を叩かれた。
「ちょっと待って!」
穏やかだが、迫力のある低音に驚き思わず振り返る。
「えっ、あ、あの僕ですか?」
びっくりして思わずその声の方を見やると、目線の高さに風紀委員と書かれた腕章が目に入った。
といっても僕よりも10㎝は背が高いだろうその人を見上げてしまう。ノンフレームの眼鏡を掛けていて、いかにも知的な感じがした。
それよりも、すっごくかっこよくて、思わず見とれてしまった。
(モデル...とかじゃないよね?)
その眼鏡の風紀委員の人は僕の肩から手を離し、口を開いた。笑顔なんだけど事務的に
「新入生だよね?まもなく入学式が始まるから服装は正しておいてくれるかな。」
「え?あっ、...す、すみません」
恥ずかしくなった僕は真っ赤になって俯く。
横目でちらりと見ると、風紀委員と書かれた腕章をつけてた上級生に声を掛けられている生徒が何人かいた。
「早くネクタイを結び直して。」
静かにそう言われると、僕は思わずネクタイを結びだす。
(ど、どうしよう、どうしよう...!!!)
だけど、焦ってしまうと上手く結べなくて、ただでさえできないのに...
(こんなことなら、ユズにやってもらうんだった...)
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