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ー文久三年、五月。京 市中ー
『あの日』から、早一月が経っていた。葵は、やっとのことで、京に到着した。
原田の『懸念』通り、旅の道中に色々あったので、予定より遅れてしまっていた。
けれど、兄の元には、先に文が届いているので、『問題』はないだろう。
ー産まれて初めて見る、京の町は、江戸より『活気』があるようだ。まぁ、葵は江戸の町にも、出たことは殆んどない。
長屋住まいしていた頃も、近所付き合いは最低限で、買い出し以外で、外に出たことはなかった。
葵
(さて、と。まずは『壬生浪士組』の屯所は…………。何方かに尋ねてみましょうか?)
葵は、屯所の場所までは知らないし、京の地理には明るくない。ならば、誰かに聞くのが、一番手っ取り早い方法だ。
当然のことながら、葵は『壬生浪士組の悪評』など、全く知らぬので、そう思ったのだが……………。
ーそんな風に、俯いて思案していたところ、目の前に、フッと影が射し、次いで男の声が聞こえた。
浪士(一)
「よう、姉ちゃん、一人かい?俺らと遊ばねえか?」
頭上から聞こえた、その声に顔を上げると、葵の行く手を五、六人の浪士が塞いでいた。
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