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その男達は、明らかに『不逞浪士』と言った風体だ。恐らく、碌な連中ではないだろう。
浪士達は、上げられた葵の顔を見て、息を飲んだ。道行く人々ですら、足を止め、『ボーッ』と見惚れている。
浪士(二)
「お、おいおい。よく見りゃ、すげえ『上玉』じゃねえか?」
浪士(三)
「こりゃ、驚いた。吉原の花魁や、島原の太夫でも、これほどの別嬪は、そうそういやしないだろうさ。」
そう感嘆の声を上げながら、マジマジと葵の姿を上から下まで、まるで『品定め』するかのように、じっくりと見つめる。
葵
(五、六人とは言え、大した腕は持ち合わせていないよう。女物の着物を着ていても、軽く捌けるでしょうけれど…………。)
葵は表情には出さず、冷静にそんなことを思案していた。しかし、ここは『天下の往来』だ。人通りも多い、こんな場所で『刀』を抜くのは憚られる。
そもそも、葵が抱えている『白夜』と言う銘の刀は、そう易々と抜くほどの、『安物』ではないのだから………。
ニヤニヤと下心丸出しの男達と、表情を変えぬ少女。どう見ても、危機的状況であるにも関わらず、誰もが見て見ぬ振りだ。
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