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けれど。それも一瞬だけのことで、直ぐ元の無表情に戻ったので、浪士達の誰一人として、気付かなかったようだ。
そして、浪士の内の一人が、その刀『白夜』に手を伸ばした、その時……………
ーパシンッ
乾いた、高い音が響き渡り、辺りが一瞬静まり返り、次いで、騒然となり、あっという間に黒山の人だかりが出来た。
刀を奪おうとした浪士の手を、葵が勢いよく払い除けたのである。それでも、やはり表情は変わらなかったのだが……………。
葵
「私にも、この『刀』にも、気安く触れること、罷りなりません!この『刀』は貴方方のような『志士気取り』が、触れていい『刀』では、ないのですから!」
葵は怯むことなく、そう言い切った。表情とは裏腹に、その声音には、しっかりと『怒り』が滲んでいた。
すると、『志士気取り』と言う言葉に、野次馬達からクスクスと笑いが洩れた。『図星』だったのか、浪士達は激昂し、抜刀した。
浪士(五)
「へー、言うねぇ、別嬪さん。見た目と違って、気ぃ強いんだ?そう言うところも『そそる』って言うか………。」
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