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先程まで大人しかった葵が『態度』を変えたことは意外だったものの、浪士は愉快そうな笑みを浮かべている。
浪士(五)
「アンタは、その刀に見合う『剣腕(チカラ)』があるのかいッ?!」
葵に向かって、浪士が刀を振り上げる。けれど、葵は微動だにせず、刀を見つめている。
普通の娘に『出来ること』では、先ず『あり得ない』のだが……………。
ーシャリンッ、ガギッ
??
「やれやれ。折角の非番なのに、『余計な騒ぎ』起こさないでくれない?しかも、『こんな綺麗な子』相手にさ?」
葵の目の前に、人の背中が見えた。一人の男が、葵と浪士の刀の間に、滑り込んだのだ。
見たところ、葵とそう変わらぬであろう歳の『中性的』な青年が浪士の刀を受け止めていた。
表情こそ、微笑を湛えているものの、目は全く笑っていなかった為、余計に恐ろしい。
?
「………“総司”。見た目の『美醜』は関係ない。だが、女一人に、大の男が多勢とは、武士の『風上』にも置けぬ。
『命』が惜しくば、立ち去るがいい………。」
いつの間にか、葵の背後に立っていた、冷たい印象の青年が、抑揚のない声で、淡々と告げた。
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