ー 開幕 ー

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ー文久三年 四月。江戸 下町ー ?? 「ふう…………あれから、もう『五年』………。兄上はご無事でいらっしゃるかしら?」 障子を開けて、少女ー紫月 葵(シヅキ アオイ)ーは、空を見上げながら、溜息を吐いた。 部屋の隅の文机の上においてある文。幾度目かわからないほど、読み返した文を、また読み始めた。 『葵へ 変わりないか?俺は今、『壬生浪士組』と言う所で頑張っている。 あんなことがあったのに、傍にいてやらなくて、すまない。  それでも、俺はいつでも葵を思ってる。葵が俺の『たった一人の妹』であることには、変わりないから………。 何かあったら、遠慮なく頼ってほしい。                   左之助』  見慣れた兄の字で、文に書かれていたのは、それだけだったけれど………。 文をしまうと、葵はまた、空を仰いだ。優しい兄の面影を心に描いて…………。 春めいた柔らかな風が、葵の頬を撫でていった。
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