ー 第一章 ー

28/29
65人が本棚に入れています
本棚に追加
/320ページ
ー咲夜は何故か、千鶴を殊更に可愛がっていたからー  その『理由』は、当の千鶴でさえ理解していなかったけれど、だからと言って、然程気にするようなことでもなかった。  そんなことより、咲夜の様子が以前に戻ったことの方が、大事だったから……………。  けれど。それでも、時折、見せる咲夜の『悲痛な表情』は、やはり『愁夜の為』のものなのだろう。    ー咲夜にとっての『唯一無二』の存在ー  それが義兄『水無瀬 愁夜』と言う男であったのだ。『命の恩人』であり、『家族』でもある、たった一人の『掛け替えのない』存在だ。 『兄』とも『友』とも呼べるであろう、複雑だけれども、大切なものなのだから……………。 藤堂 「でも、咲夜はもっと喋った方がいいよ。折角『良い声』してんだし………。」 シュンとしたように、藤堂が言った。確かに藤堂の言う通りだ。  咲夜の声は『良い声』だった。小鳥の囀ずりとか、鈴の音が鳴るようではないけど、耳に心地好く『浸透するような声』と言える。 ー『女性』にしては、高めの身長も、低めの声も、  咲夜の『魅力』を際立たせるものだー
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!