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ー新選組屯所(八木邸) 玄関ー
今朝方から降り出した雨は、飽くこともなく、夜が更けた今となっても、尚も降り続けていた。
そんな中、一人の若者が、傘も持たずに出掛けようとしている。………いや、『中性的な容貌』をしているが、若者はどうやら『女』であったらしい。
何事か、『深い事情』でもあるのか。平素から『男装』をしているのだろう。
??
「………こんな夜更けに、こそこそと何処に行くつもり?不審な動きをするなら、斬っちゃうよ、『咲夜』ちゃん。」
飄々とした声で、無遠慮に背後から掛けられた声。『嫌な奴に見つかった』と、『咲夜』と呼ばれた女が、心中で舌打ちした。
咲夜
「気配を絶って、近付くな『総司』!悪趣味だ。それに『ちゃん』付けで呼ぶなと、何度言えば理解する?」
そう言って、咲夜は声を掛けてきた男ー『沖田 総司』ーを睨み付ける。
しかし、沖田はそんな咲夜の視線にも動じず、飄々とした態度を崩さない。咲夜の緋色の瞳が、ますます『険』を帯びる。
沖田
「いいじゃない、別に。君が『女の子』なのは、本当のことでしょ?」
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