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先生の首に腕を回し、
ぎゅっとすがりつく。
目を閉じ、先生の首元に
頬ずりをすると、首筋に
かかる柔らかな髪が、
鼻先をくすぐった。
先生の匂いが、私の胸に
沁み込んでいく。
大丈夫。こんなに
通じ合えたから…。
身体は離れても、…今夜、
わたしたちの心は、
ずっと手を繋いでいられる。
「ホントに、
そろそろ行かないと、
お家の人が心配するよ。
…家に入るまで、見送るから」
「はい…」
玄関の前に立ち、振り返ると、
公園に続く脇道に、先生が
立っているのが見えた。
手を振ると、先生が
小さく手を上げて応える。
先生から、心に小さな灯りを
灯してもらったようで、
……わたしは微笑んで、
玄関のドアを開けた。
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