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『萌に危害を加えた今、
春山家に月子の居場所は
無いってこと』
更科くんの言葉が、
今になって重く
のしかかって来る。
「…でも…。
今、月子ちゃんから、
あの場所を奪っちゃったら…」
『椎名』
先生は、わたしの言葉を遮った。
『俺は……今回、
お前が無事だったことを、
運が良かっただけだと思ってる。
このまま何もなかった
ことには、出来ないよ』
「だけど…」
『あの人が言ってたことは、
間違ってないよ』
「……?あの人って……」
『あの、白井って人。
――あの人は、すごく
正しい事を言ってたと思う』
そう言った先生の声は、
なぜか打ちひしがれて
いるように聞こえた。
***
「椎名。
残り十五秒で、戻るよ」
「あ。…はいっ」
田辺くんの声で我に返り、
わたしは慌てて体勢を立て直した。
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