ボールペン①

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そこまで言われたところで、さすがの私も彼が言いたいことが理解できた。 そして心臓の音が少しずつ大きくなっていく。 「貴女が階段を降りた後、必ず彼がやって来る。けれどあの踊場から下に降りることはない。つまり、あなた達は踊場で落ち合っているということです」 「・・・」 「ここに座っていると、見えるんですよ。相手の方も、時々ここを利用されますし。彼は結婚指輪をしている」 知らなかった。この位置から、まさか・・・。 そして愕然とする私に、事務男はトドメを刺す。 「会社の方に、知られたくはないでしょう?」 なんて男なの・・・。 こんな卑怯な手段で私に言うことを聞かせるなんて。 「私を・・・脅すの?」 この男は、この秘密と引き換えに私にどこまでを要求するつもりなの? 食事に行くだけで、秘密を守ってくれるの? 震える両手に力が入らない。手から財布が落ちてしまいそうだ。 「そう思って頂いて結構です」 そう言ったのと同時に完成したボールペンのラッピング。 キレイに包装され、可愛らしいリボンまで掛けられている。 「ひどい・・・」 軽蔑の言葉を投げる私に、事務男はカウンター越しに手を伸ばした。
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