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事務男は、動揺する様子も見せず先ほどから激論の中心に居る二万一千円のボールペンをテキパキと包装し始めた。
「だ、だから、貰わないって言ってるじゃ・・・」
「あなたはこれを受け取りますよ」
ヒステリックな私の声を遮って、事務男は静かに続ける。
「何故なら僕は、あなたの秘密を知っている」
「は?」
いい加減なことを・・・。
今まで事務男と持った接点など、月に数回私が事務用品を買いに来たくらい。
それでどうやって私の秘密を知るというのか。
暫しの沈黙を挟んで、事務男は話しはじめた。
「本当は言いたくなかったのですが・・・、どうしても貴女に食事に付き合って貰いたいので」
「・・・」
ハッタリだと思う。
だけど妙に静かで落ち着き払っている事務男に、脅威のようなものも感じる。
私はゴクリと唾を飲んだ。
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