ボールペン①

24/31
439人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「あなた、同じ会社の方とお付き合いされてますね」 「!?」 「しかも、相手の方はご結婚されてます」 嘘でしょ。 コイツ、何でそんなことを・・・。 寒気と同時に背中にじわりとと汗を感じる。 誰にも気付かれてないはずだったのに・・・。 いや、もしかしたらカマ掛けてるのかもしれない。 不倫なんて、今は珍しいものじゃないし、新手の詐欺なんかは殆どこのパターンだ。 狼狽えちゃダメ。 「また、何を根拠にそんなことを。そんな事実はありません」 私は努めて冷静を装った。 「まあ、普通は隠しますよね。では、ここからあなたの会社のビルを見てみて下さい」 私は事務男に言われるまま向かいのビルを振り返った。 でも・・・特に変わった様子は無い。 からかってるの? 事務男のくせに、私をからかおうなんて百年早い。 「見ましたけど?何か?」 私は挑発するように疑問を投げかけた。 感情むき出しの私に対し、顔色一つ変えず定位置に座ったまま淡々とボールペンの包装を終えた事務男が言う。 「気づきませんか?貴女とあの男性が逢瀬を重ねる階段、踊場以外の所はガラス張りなんです」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!