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足も震えて、こちらに伸びてくる手から逃げることもできない。
そんな私の震える手に、事務男はキレイにラッピングしたボールペンを差し込んだ。
その感触が何故か妙に生々しくて、自分の意に反して大きくビクリと反応してしまった。
「これは受け取って頂きます。中に僕の連絡先が書いてありますので、必ず連絡を下さい」
再び素知らぬ顔でパソコンに向かうと、何やらカチカチと入力を始めた。
弱みを握られた以上、この男を蔑む言葉は掛けられない。
何にも言えず、ただその場で事務男の横顔を凝視して震える。
「昼休みが終わってしまうのではないですか?」
こちらに顔を向けることもなく、冷静な状況判断をした事務男。
その指摘で現実に引き戻された私は、不自然に後退りながら店を出た。
彼の脅迫に返事もせず、もちろんボールペンのお礼も言わずに・・・。
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