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「こんばんは」
「いらっしゃいませ」
いつも通り顔を出すと、いつも通りの返事が聞こえる。
「これ、焼いてみたんです。また後で食べて下さい」
私は事務男にケーキを渡した。
「今日は一緒に食べないのですか?」
「ええ、今日はちょっと急用が入ってしまって」
「それは残念です。また、お待ちしてますから」
「はい・・・」
彼に会って気づいた。
まともに目が合わせられない。あんなに私を心配してくれて、いつも笑顔で受け入れてくれる彼。
申し訳ないというか、情けないというか、みっともないというか・・・。
裏切ってる。そんな後ろめたさ。
「心のケアは順調ですか?」
伏し目がちに頭を下げて店を出ようとした私に、事務男はいつもより低く厳しい口調で言った。
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