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「な、何って・・・」
不機嫌な声に、私も動揺する。
なんでいつもみたいに「いらっしゃい」って言ってくれないの?
優しい笑顔が見たかったのに、何でそんなに怖い声を出すの?
昨日から感情を拒絶されっぱなしの私の心は、絶対的信頼を置いていた彼にも拒絶されたようだ。
思わず、子供みたいに下唇を噛んで悲しさをごまかそうとした。
もう、受け入れてくれる人は居ない。
「僕が、怒っていないとでも思ってるんですか?」
更に厳しい口調で叱責すると、眼鏡を外して目頭を押さえた。
「・・・だって」
私が不倫してるの知ってて優しくしてくれたんでしょ?
その上で受け入れてくれてたんでしょ?
私たちは、カウンターを挟んで沈黙していた。
初めて見る怖い顔。
嫌われてしまったみたい。
あんなに優しかった彼を、怒らせてしまうなんて。
「ごめんなさい」
私は彼から視線を逸らして、外へ出ようとした。
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