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「誰よ!その女!」
敵意むき出しの視線を私に向け、彼女はヒステリックに言った。
「来るなって言っただろ」
彼は相変わらず厳しい口調で返す。
私、ここに居ていいの?
これって、完全に修羅場というやつでしょ・・・
この状況から察するに、彼女は彼のことが好きなのだろう。
だけど彼はおそらく・・・
「やだ!私には、真ちゃんしか居ないんだから!」
良く見ると、とても可愛らしい女の子だ。
目にはいっぱい涙を溜めている。
「何度も言わせるな。俺はお前に恋愛感情は抱いて無い」
「約束したじゃない!ずっとずっと、私は真ちゃんだけ見てきたのに」
そっか、元カノなんだ。
私は二人の言い合いを聞きながら、彼らの関係を推測していた。
「もう、いい加減にしてくれよ。俺の好きな人は、ここに居るこの人なんだ・・・」
その言葉を合図に、汚れた私の涙とは比べ物にならないほど純粋で、美しい涙がポロリと落ちた。
違う。
私は彼にそんなふうに言って貰えるような人間じゃない。
そう思ったけれど、緊迫した空気に私は言葉を失ってしまっていた。
「行きましょう」
固まったままの私を急に振り返ると、今度は強引に私の手を握り、車の方へと連れて行った。
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