200人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「いらっしゃいませ」
いつもの場所からいつもの声が返って来る。
そしてまたいつものスタイル。
中身がどんな人なのか知ってしまったからか、この格好の意味が分からない。
あんなに素敵なのだから、こんな不思議な格好で居なくても・・・。
「先日はご迷惑おかけしてしまって、すいませんでした。これ・・・お詫びに」
私の素朴な疑問はさておき、とりあえず先日の謝罪をしてクッキーを差し出した。
「迷惑だなんて思っていませんよ。お付き合い下さって、逆にお礼をしたいくらいなのに。でも、せっかくですので、こちらは頂きますね。ありがとうございます」
事務男は少し遠慮を見せたけれど、差し出したクッキーを受け取ってくれた。
「はい。お仕事の合間にでも摘まんで下さい。あと・・・」
「あと?」
「今日からボールペン使わせて頂いてます」
「それは良かった」
事務男が笑顔を見せる。
相変わらず眼鏡は蛍光灯を反射して見えないけれど、笑う口元だけ見れば分かる。
眼鏡の下には、先日と同様に優しい眼差しが隠れているに違いない。
最初のコメントを投稿しよう!