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「京香さん、さっきから口数が少ないですね。気を遣わせてしまいましたか?」
観覧車に乗って二分程。
私は確かにさっきの件に触れまいとして言葉を選びあぐねていた。
「違います。そんなことないです」
って言ってはみたけど、気の利いた話題も浮かばない。
再び訪れた沈黙。高台にある遊園地の観覧車だから、外はかなり遠くまで景色が見渡せる。
ありがたいことに、目のやり場だけには困らない。
「気まずい・・・とか思ってますか?」
「・・・」
『ええ、気まずいですよ』心の中で私は呟く。
いつも余裕で完璧な彼が見せた少しカッコ悪い部分。
あまり触れないほうが良いと思うのが普通だ。
景色に目を向けたまま言葉を返せないでいると、彼が突然立ち上がった。
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