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「心当たりはあるんですか?」
彼は私をなだめるように背中をさすりながら聞いた。
「やっぱり、彼の奥さん・・・ですよね。浮気に気づいて探偵を・・・とか。どうしよう」
今まで、こんなことなかったのに。でも、私はそれだけのことをしてたんだ。
今更ながら、バカな女。
「可哀想ですが、そう考えるのが自然ですね。ただ、探偵ならまだマシですが、復讐という可能性もゼロではないでしょう」
そうだ。彼の言う通り、尾行だけで終わるなんて保障は無いんだ。
彼の言葉に改めて湧き上がる恐怖。私は大きくなる震えを抑えることが出来ない。
「警察には?」
「まだ何も起こってないですし、どう言えば?」
「確かに。でも夜道はさすがに危険ですね。当分の間、仕事が終わったらここへ来て下さい。僕が部屋まで送りますから」
「い、いえ。そういう訳には。巻き込むつもりはなかったんです。もしも真理さんにまで何かあったら・・・。」
いくらなんでも彼に危険が及ぶようなことになったら大変だもの。私は彼の申し出を断った。
「いいえ。イヤだと言ったら迎えに行きますよ。今日も送りますから、少し奥で待ってて下さい」
奥の部屋に私を連れて行き、彼は温かい紅茶を淹れてくれた。
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