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「真理さん、こんにちは。お遣い頼まれちゃって。ゼムクリップってどこでした?」
「いらっしゃいませ。こちらですよ」
いつものように会社でお遣いを頼まれた私は、向かいの文房具店にやって来た。
「そういえば、先週から興味ある映画が公開になってるんですよ」
「ああ、もしかしてそれって・・・」
古いイギリスの小説が原作の時代物の映画。
私もテレビの情報番組で紹介されているのを見て興味を持っていた。
「映画、それを観に行ってみませんか?」
「ええ。ついでにショッピングですね」
「京香さん、テニスを忘れてますよ」
目的のクリップを手渡してもらい、会計を済ませようとレジへ向かっている時だった。
「あれ?・・・早希?」
会社のビルのガラス張りの階段。
一瞬そこを人影が通り過ぎたような気がした。
確かあれは早希の着ていたワンピース・・・。
確か、真理さんはここから修二と私の関係に気づいたんだ。
私たち以外にも、あの階段を使ってるいる人間が居るんだ。
会社の人間にバレる前に階段使うの止めて良かった。
「京香さん!」
「ひゃ!」
ホッと胸をなで下ろした私の腕を、真理さんは突然強い力で引いた。
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