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修二が足で悪戯するのを止めた。
今まで流れるように私の問いに答えていたのに、急に黙り込む。
呼び鈴を押して、日本酒を追加注文した。
暫く続く沈黙。
この沈黙が意味するもの。私はそれを瞬時に悟った。
早希の言ったことは、事実なんだ。
日本酒が運ばれてくると、再び手酌で一口飲んだ。
「・・・東郷が、言ったのか?」
再び修二が口を開いた。
静かに、低く、さっきまでの勢いは何処にも無い。
「ええ、そうよ。今日、彼女会社で大声で泣いたの」
私の言葉に、修二は顔を強張らせた。
「あいつ・・・、会社の皆に言ったのか?」
「ううん。理由を聞いたのは私だけ。他の人は理由までは知らないわ」
修二の表情に少しだけ安堵の色が見えた。
私意外は修二と早希の関係を知らないと分かり、安心したのだろう。
「京香、違うんだよ。俺の話を聞いてくないか?」
調子の良さは無いが、再び修二の口数が増えていった。
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