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早希が会計を済ませた。次は私の番だ。
「お願いします」
「千二百六十円です」
「領収書・・・お願いします」
サラサラと、相も変わらず美しい文字で書かれる領収書。
ピリッと紙をカットする音がする。
「ありがとうございました」
商品と領収書を受け取り、私と早希は店を出た。
『また後でね』とか『電話する』とか、全く言えなかった。
彼も、何も言わなかった。
お客と店員。
一瞬にして、私たちの関係が数か月前に戻った。
こんな、何でもないやり取りの中で、何かが音を立てて崩れた。
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