追い討ち②

15/26
前へ
/26ページ
次へ
「あ・・・あの。京香・・・です」 「ああ、うん」 私がどんなに震えた声を出しても、彼の声は不機嫌なままだ。 「い、今、忙しい?」 「うん。まあ、忙しいから帰ったんだけど」 「そ、か・・・ごめん」 「・・・」 次の言葉が見つからない。 言い訳も何も考えないで電話したことを、この時点でようやく後悔した。 「用が無いなら、切るよ」 彼の呆れ声が聞こえた。 「待って!ごめんなさい。ホントごめんなさい!」 嫌だ。このまま電話を切るなんて。 勝手かもしれないけど、『怒ってないよ』って言って欲しい。 次の約束がしたい。 「何に対して謝ってるの?忙しいのに電話して無駄に長くコールしたこと?」 「えっ?」 わかってるくせに、わざと分からないふりで私を責める。 こんなこと、今まで無かったのに。 本当に、本当に怒ってるんだ。 「ち、違うの。それも謝るけど・・・」 私も私で、彼を恋人として紹介しなかったことを、どう謝るべきなのか分からない。 思わず口ごもってしまう。 その沈黙の間を彼がため息と共に埋める。 「じゃあ、他人に紹介できない程、僕の存在を恥ずかしいと思ってたことかな?」 「・・・っ!」 ツー・ツー・ツー そして、一方的に電話は切られた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

312人が本棚に入れています
本棚に追加