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結局、『早希の友人を紹介』という話は断った。
たとえ真理さんが"終わった"と思っていたとしても、そんな気持ちになれるわけも無かった。
賑やかな会場の隅っこ。
私と同じお一人様が数人他愛も無い世間話をしている。
毎年一人で参加してるから、この状況には慣れっこのはずなのに、一緒に来られたはずの誰かを思うとやたらと寂しかった。
その会場へ、少し遅れて早希がやって来た。
隠すこともなく、堂々と修二のエスコートだ。
そもそも男前で背が高く見栄えのする修二。
他の会社からの参加者から少しざわめきが起こる。
その隣で笑う早希は何処かしら誇らしげだった。
バツ一の男を連れて歩いて、何が嬉しいんだろう。
少なくとも会社の同僚たちは、修二の離婚を知っているわけで、どちらかといえば恥ずかしいくらいに思えた。
実際、同僚たちは眉をひそめている。
「あ!京香」
冷めた目で二人を見つめていたら、早希と目が合ってしまった。
私は咄嗟に笑顔を作って右手を軽く振った。
主催者側の職員と話し始めた修二を置いて、早希だけが私に近寄ってきた。
「お疲れ。随分遅かったのね」
「うん。苅谷さんが少し仕事で遅くなってね。でも、絶対一緒に行くって約束してたから」
嬉しそうに話す早希からは、羞恥心など微塵も感じない。
おめでたい・・・。
心の中の悪い私が彼女を嘲笑った。
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