追い討ち②

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「東郷は上手いこと先に帰す。黙っていればわからないさ」 なおもしつこく誘う修二。 黙っていれば・・・。 この最低な罪の片棒を、私もつい先日まで担いでいた。 そう思うと胸が痛くて、何も言い返せない。 黙ってうつむいた私を、修二は急に背後から抱きしめた。 大きな手が、私の胸の膨らみを鷲掴みにしている。 「・・・やっ!やめてよ!!」 その腕を振り払うために身をよじると、偶然後ろに張り付いている修二のお腹に私の肘が入った。 「うっ!」と唸ったと同時に少し腕の力が緩む。 その瞬間を逃さず、私は修二の腕からすり抜けた。 でも、修二はしぶとく私のバッグを掴んでいる。 「は、離して!私はもう、人を欺くような恋愛はしないわ!」 私が叫んだ直後だった。 偶然にも廊下の向こうから、人の話し声が聞こえてきた。 た・・・助かった。 さすがの修二も、こんなところを人に見られては困るのだろう。パッとバッグから手を放した。 「じゃ、後でな」 そう耳元で囁くと、何も無かったように背を向けた。 本当に、なんて日なんだろう。 失恋だけで、精一杯なのに。 こんな時に救ってくれるはずの優しい手を、私は自ら手放してしまったんだ。
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