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「遠慮しなくていいのに。幸せのおすそ分けだから。じゃ、急ぎの書類があるから先行くね」
早希はそう言うと、再び跳ねるようにして先に会社に向かった。
私は小さくなる彼女の背中を見つめながら、何かスッキリとしない気持ちになっていた。
早希は私が一番だったことを知らないで修二と付き合うんだ。
もちろん、私が修二を拒んだから早希にいったとは断定できない。早希に私とのことがバレたとしても同じように早希を繋ぎとめようとしたのかもしれない。
だけど、どっちにしてもお勧めできる男じゃないことは事実だ。
彼女の後ろ姿が視界から消えた。
「はぁ・・・」
早希に対するスッキリしない気持ちのせいなのか、それともハッキリと真理さんを恋人だと言い出せない自分への情けなさなのか・・・。
小さくため息をついたその瞬間、再び後ろから声をかけられた。
「桐野!」
その声に、一瞬私の体が凍りついた。
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