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そんなこと言われたら、涙が止まるわけない。
私は弟の前で、みっともなく泣き崩れた。
せっかくのグラタンは、結局すっかり冷めてから食べた。
哲平は、本当は気づいてるのかもしれない。
だけどあえて、核心には触れなかった。
イイ男になったね。姉の私が保証するよ。
照れ臭くて口には出せないけど、あんたの彼女はきっと幸せ者だね。
嗚咽で喋れない私に、哲平は声をかける。
「なんだよ。今日は彼氏とケンカでもしたの?」
ずっと、私のこと心配してくれてたんだよね・・・。
ごめんね哲平、ケンカじゃなくて・・・終わってしまったの。
『言えない関係』のせいで、あなたの姉は大きな天罰を受けてきたの。
自慢の姉になれなくてごめん。
今度は心配かけないように、慎重に恋をするから。
見た目がカッコよくなくたって。
御曹司じゃなくたって。
幸せになることだけ願ってくれてる家族のために、次の恋は間違えないから。
「ごめんね・・・」
そう返すのが、精一杯だった。
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