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「はぁ」
大きく息を吸い込んで、そのまま大きくため息をついた。
レンガの塀の向こう側には、既に彼が居るかもしれない。
あまりに落ち着かなくて、私はもう一度息を吸い込もうとした。
「しんちゃんはもう来てます。くれぐれも変な気を起こさないように」
背後から聞こえた背筋を凍らせる声。
私は吸い込みかけた息をゴクリと飲み込んだ。
ついて来たんだ。私を監視するために・・・。
「分かってるわ」
私は彼女を振り返らなかった。
都会の裕福なお嬢様が、田舎者でバカな私を見下して笑う。
そんな視線には、もう耐えられない。
私は彼女から逃げるように、喫茶店のドアに手をかけた。
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