幼馴染②

13/20
前へ
/20ページ
次へ
「とりあえず座ろう」 肩に置いた手を私が退けたせいだろう、真理さんは一瞬私の手を引こうとしたけれど躊躇って拳を握った。 本当は触れられたいのに。 そう思ってしまう自分を制するように、私も拳を握る。 彼の後ろについて店の奥へ進んだ。 落ち着いた深いグリーンの椅子に座ると、店員さんがやってきた。 「ミルクティーで・・・」 本当は、何か飲物を飲む時間なんて要らなかった。 とにかく早くここから立ち去りたい。これ以上一緒に居たら、泣き出してしまいそうだ。 「ごめんなさい。何の連絡もしなくて・・・」 「もういいよ。でも、どういう経緯なのか、説明してもらっていいかな?」 経緯って、そんなの正直に言えるはずがない。 正直に『あの子』の話をしてしまえば、その写真がどんなものだったのかを追及されるだろう。 それに『あの子』は真理さんの大事な人だから、尾行していたのが彼女だと知ったら彼が悲しむことになる。 当然の質問で簡単に予想できたはずなのに、私は答えを用意していなかった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加