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「完全に騙されたってことか・・・。本気の僕を笑ってたんだ?」
声を荒げることもなく、いつも通り静かに、だけどテーブルの上の拳は固く握られている。
「・・・」
笑ってなんかいない。
いつもスマートで年下とは思えない包容力。その容姿に致るまで完璧な貴方を、気がつけば私が必死で追いかけていた。
「大したもんだね。演技であんなに幸せそうに笑えるんだな」
演技じゃない。
本当に幸せだった。
だけど、それを今ここで伝えることはできない。
「そりゃ、お見合い相手も簡単に騙されるだろうね」
そうよ。不倫相手の奥さんや家族を欺いてきた女だもの。
知っていて付き合ってくれてたけど、結局は『そういう女』だって、心の何処かで思ってたんだよね。
だから、大事なことは秘密にしてたんだ。
遊びだったのは、真理さんのほう。
「自分だって・・・私を騙してたじゃない。大会社の御曹司だなんて、そんな大事なこと秘密にしてたじゃない。未来を見てたなんて・・・嘘。真理さんの未来には、ちゃんと決まった相手が居るじゃない。私だけが・・・私だけが悪いみたいに言わないで」
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