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夜、私は哲平に『少し出かけてくる』と置き手紙をして、昼間彼女に差し出されたメモ紙の示す場所に向かった。
あの娘に写真を見せられた、あの会社近くの喫茶店だった。
『彼女は酷い女だ』と写真をバラまかれるのを覚悟で伝えたら、少しは同情してくれるだろうか。
万が一真理さんが私を本当に好きでいてくれたら、一緒に誰も知らない国に逃げてくれるだろうか・・・。
なんて、絵空事を考えてみたり。
だけど、彼は御曹司。
私みたいな馬の骨とは違って、背負っているものが多すぎる。
そんな簡単に全てを捨てられる訳がない。
それどころか、大事な人を悪く言われて怒り出すかもしれない。
最後の最後に、心底嫌われてしまうかもしれない。
そんな答えの無い葛藤で心は乱れているのに、私は指示された喫茶店に到着してしまった。
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