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「姉ちゃんはもう、引っ越しの準備出来てんのか?」
「うん。急で・・・悪かったわね」
土曜日の朝だった。哲平が自分の荷物の整理をしながら話し始めた。
「いいよ。調子悪そうだったもんな。田舎帰って休養すればいいよ」
「うん・・・」
順調そうに見えた姉の恋愛。
それに突然暗雲立ち込めて心身共に疲れ果てて・・・。
そんな状況を間近で見ながら、あれから哲平は私の恋愛について何も聞いてはこなかった。
「元気になったら遊びに来ればいいし、戻りたいと思えば、またこっちで仕事探せばいいじゃん」
「うん・・・ありがと」
相変わらずデキた弟。
哲平が居てくれたおかげで、どれほど私は救われただろう。
不倫の罪悪感で頭が変になりそうだった時も、唯一自分を取り戻せる時間が哲平と過ごす日常だった。
広い肩幅と筋肉質な腕。
すっかり頼れる男に成長した弟に、私は心から感謝していた。
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