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「私、何もしてない。きちんと別れ話もしたわ。見てたんでしょ?」
少しずつ後ずさりして、私は弾き飛ばされた携帯を拾い上げようとした。
だけれど、カツンという音とともに、私の視界から携帯が消え、更に後ろへ滑っていった。
「どうやって会ってたの?」
携帯を蹴り飛ばしたあの娘が頭上から質問を投げかける。
「やめて。私はあれから一切彼と連絡を取ってないわ」
どんなに耐えたか分からない。本当は、声だけでも聞きたかった。
さっきだって、最後にメールで『ありがとう』と伝えることすら我慢したのに・・・。
朝のプラットフォームで突然起こった二人の若い女の言い争い。
この只ならぬ状況に気がつき、私たちの周りには少しずつ人だかりが出来始めていた。
「しんちゃんはあんたと別れてないって言ったわ!」
「え・・・そんな訳無いわ」
そんなわけ無い。
あの日喫茶店で、きちんとサヨナラしたもの。
真理さんは、追っても来なかったもの。
「しらばっくれるその顔も許せないのよ。契約違反だからね。今ここであの写真をバラまいてあげる!」
「言いがかりはやめて!私本当に何もしてない!」
私はバッグの中から何かを取り出そうとする彼女に必死で叫んだ。
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