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「樹里、もうそこまでだ」
「な、なんでここに?」
ゆっくりと目を開くと、そこには上げた腕を掴まれて焦りと苛立ちの表情を浮かべたあの娘が居た。
そして、その腕をしっかりと掴んで厳しい視線を彼女に向ける男性。
それは、紛れも無く真理さんだった。
「まさかとは思ったけど・・・」
「違う!私はしんちゃんのために・・・。しんちゃんは騙されてるのよ!」
「騙してるのは、お前のほうだろ?」
真理さんは掴んだ彼女の手から恐らくあの写真が入っているであろう封筒を取り上げた。
「その封筒の中身を見てよ!そうすれば騙されてるのはしんちゃんだってわかるわ!」
彼女は真理さんに縋りついて、必死で訴えている。
私はただ黙ってそれを見ていた。
この大勢の人たちにあの写真を見られるのは辛い。
だけどそれと同じくらい、もしくはそれ以上に、真理さんに見られることも辛い。
結局は、地獄だ。
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