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「可哀想に。こんなに震えて・・・」
一歩、二歩、私に近づいた彼。
差し伸べられた手が、私の頬に優しく触れた。
ゾクゾクッ
まるで電流のように、そこから全身が痺れる。
「樹里、僕はお前がその写真を使って京香さんを脅したことも・・・知ってるんだ」
彼女に背を向ける格好で静かに言うと、彼は少し辛そうな表情をみせた。
「わ、私はしんちゃんのために・・・」
驚きと焦りの色を浮かべた彼女が弁解を始める。
だけど、彼女の言葉が終わらぬうちに真理さんは私に話しかけた。
「遅くなってごめん。もう大丈夫だよ」
そのままギュッと抱きしめられて、今度は全身から放電するように力が抜ける。
この人は、こんな私の味方になってくれるんだ。
こんな公衆の面前で、大切なあの娘じゃなく、私を・・・。
ああ・・・、このままこの腕の中に溶けてしまいたい。
そうすれば、ずっとずっと一緒に・・・。
長い長い緊張状態から解放され、私は更に脱力していった。
「私・・・私・・・」
伝えたいことや聞きたいことが一気にあふれて、なにから伝えて良いのか分からない。
「いいよ。何も言わなくてもいい。よく耐えたね」
「う・・・ん」
その優しい言葉に、全てが集約されている気がする。
私は完全に彼に身をゆだねていた。
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