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「しんちゃん!目を覚まして!そんなふしだらな女となんて、伯母様が悲しむわ!」
けたたましい声を上げて、彼女は彼の腕を引いた。
そうだ。真理さんは御曹司。
今はどんんなに優しくしてくれても、私とは違う世界のヒト。
こうして、ピンチから救ってくれただけで感謝しなくちゃいけない。
この先は求めちゃいけないんだ。
私は我に返り、彼から離れようと両手で胸を押した。
「このままでいいんだ」
そっと彼が耳元で囁く。
そして私を抱きしめたまま、彼女に告げた。
「娘同然に可愛がってた樹里がこんな酷いことをしたと知ったら、母はもっと悲しむよ。僕も、最初は信じたくなかった。ホント、残念だよ」
「そんな・・・」
彼女の瞳から、強い意志が消えた。
それと同時に彼の腕から手を放すと、俯いて拳を強く握った。
周囲には相変わらず人だかり。
人が人を呼び、さっきよりも人数が増えたかもしれない。
たくさんの視線に晒された状態で、真理さんに拒否された彼女。
彼女もまた、少し震えているように見えた。
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