ボールペン③

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「弟さんに、感謝しなければいけませんね」 今朝の弟の様子を話すと、事務男はようやく笑顔を取り戻した。 「弟と二人暮らしなのですが、最近はすっかり大人になってしまって、どちらが年上なんだか・・・」 私もそれを笑顔で返す。 「京香さんがお姉さんだなんて、弟さんは幸せですね」 先ほどからのお世辞攻撃がくすぐったくて、どうも落ち着かない。 「そ、そんなこと無いです。もっと、ちゃんとした人間じゃなきゃ・・・」 そこまで言って、自分でハッとする。 『私は不倫するような人間で、ちゃんとしてない』 そう言ったのと同じだ。 言葉の続きを見つけられないで黙り込んだ私。 彼だって、こんな言葉には応え辛いに違いない。 自分で情けなくて「あはは」とばつ悪く小声で笑う私。 そんな私の指を事務男は再びなぞり、優しく話題を変えた。
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