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 タツオはタツオキとジョージを見比べていた。ふたりの少年は雰囲気がよく似ていた。ジョージが白で、タツオキが黒というイメージの相異はあるが、どこか質感が似ていた。穏やかで涼しげな雰囲気がありながら、底のしれない力や可能性を秘めている。抜群の切れ味を笑顔でくるんで、普通の人間のあいだに隠れているのだ。むきだしの優秀さや強さはかけらもない。同世代にこんな人間がいる。タツオは人の不思議が怖くなった。タツオキがいった。 「きみが菱川浄児くんだね。ジョージと読んでもいいかな。お父上のことは残念だった。ぼくも子どものころ、お父上のトマス・ベーハーシュ・アルンデル卿(きょう)によく遊んでもらった。アルンデル将軍といったほうがいいのかな」  ジョージは顔色を変えなかった。ただ目の色が一段深くなっただけだ。ジョージの父については初めて名前をきいた。触れてほしくなさそうだったので、1班ではタブーだったのだ。
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