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「進駐官というちいさな組織のなかで、昇進とか、派閥とか考えすぎないほうがいいんじゃないか」  クニがちいさく叫んだ。 「おまえはいつもカッコつけすぎなんだよ。ちいさな組織っていうが、進駐官は100万人以上いるだろ。出世すれば、なんでもやりたい放題(ほうだい)だ」  100万人以上いる進駐官のうちの100分の1。それが東島進駐官養成高校卒業のエリートだった。卒業すればすぐに進駐官少尉の地位を与えられ、年上の部下を多数もつようになる。勉強も戦闘訓練も厳しいのは当たり前だった。  月岡教官のいうように自分にはまだ見ぬ潜在能力と可能性があるのだろうか。毎晩同じ部屋で眠っていても天才に違いないと確信できるジョージと互角に闘える力があるのだろうか。タツオはおぼつかない足どりで、ガラスの屋根が夏の日ざしを透かす渡り廊下を歩いていった。気がつけばセミの声がやまかしい。日乃元(ひのもと)の夏だ。
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