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こけしの顔に筆を入れる
おじいさん職人の
真剣な顔を観ながら、
ポロ、と零れた涙を
拭って、鼻を啜る。
せっかく、お泊まりなのに。
いつもより長く、
一緒に居られると思ったのに。
TV画面では、
作りたてのこけしを
不自然なほど褒め称える
女性レポーターの笑顔が
大写しになっている。
……別に、
酔っ払わなくてもいいから…。
こちょこちょ
出来なくてもいいから…。
もうちょっと、先生と
一緒に居たかった。
はー、とため息をついて、
抱えた膝に顎を乗せる。
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