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まだ夜明け前と言うこともあり、連絡を受けた会社の代表は警備の者が受け、その後緊急事態との連絡が貴彦の実家までたどり着いたのは、幾人かを経て早朝5時のことだった。
まず貴彦の兄、将一(まさかず)が病院に駆けつけ、状況を把握してから家の者に伝えることになった。
将一が病院に到着した時はまだ手術中で、警察から事の次第を聞き終わると、血の気が引く思いがした。
母への連絡は、大部分を端折り、ただ未だ手術中で容態は分からないと話す。
すると、1時間後には将一の横に母が来ていて、手術室前の待合い所で一緒に手術が終わるのを待った。
手術が終わり、運ばれる貴彦の姿を見て、母は嗚咽を飲み込んだ。
ICUに入ると、間もなく執刀医が現れレントゲン写真を掲げ経過を詳しく説明した。
母はその内容を一つとして飲み込めず、将一に詰め寄る。
「それで、助かるの?どうなの?」
将一は厳しい表情のまま答える。
「分からないんだそうだよ。頭だからね。結局は本人次第だって…」
将一の目にうっすら涙がひかると、母は息子の胸を叩き、
「泣くのはまだ早い!」
と怒鳴りつけた。だがその母も涙を流していた。
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